様式9は施設基準を管理する上で最も大事な書類です。
看護配置、看護補助者配置、平均夜勤時間の評価などに欠かせません。
経営戦略を練る上でも様式9がないと考えれれないと言っても寡言ではありません。
様式9の基本的な考え方を解説しています。
7対1、10対1、13対1・・と言う言葉は看護基準だということは知っているけれど、実際にはどんなものかと思っている人は結構いると思います。
「様式9」は最も大事な書類です。
しっかり理解して、来るべき適時調査に備えましょう!!
実は正確に理解しているのは、病院事務でも少ないのです。
でも、これを理解していると病院の実態・経営が見えてくるかもしれません。
今回お話する看護基準とは入院病棟に看護職員がどの程度配置されているかがわかるという基準です。
(実は外来の看護師にも看護基準はあるのですが、あまり話題になりません。)
どの程度配置されているかによって診療報酬(収入)が変わってきます。
基準というくらいなので、これが守られていないと行政機関(厚生局や保健所)からお叱りを受けることがあるので、病院の管理者は常にこの基準を満たしているか否かに目を光らせなければなりません。
これを読むとある程度、看護基準について理解できるようになります。計算方法についても説明します。
ぜひ、最後までお付き合いください。
様式9・夜勤72時間ルールを解説|超過するなら、まず設定時間の見直し!
適時調査の再開
新型コロナウイルスが猛威を振るっているせいで厚生局が立ち入り調査する「適時調査」は2020年度と2021年度は見送られてきましたが、2022年度は早々に再開すると発表されていました。
もうすでに始まっています。
私の近隣の病院では複数の病院が調査を受けたとの情報が入ってきています。
適時調査は原則的には年に1回、厚生局の職員が3名程度で診療報酬が正しく請求されているかをチェックする調査です。
しかし、厚生局も忙しいようで年に1回行われていることろは、ほとんどないようです。
人口密集地の都道府県になると3年から5年に1回となっているのが実態のようです。
その適時調査でも最も重視される様式でもある「様式9」はしっかり理解しておく必要があります。
看護職員の配置
一般的に看護基準は「●対1」で示されることがありますが、この●の部分は患者数に当たります。
おおまかにいうと、患者●人に対して看護職員1名という意味です。
よって●が小さいほど、看護職員当りの患者数が少ないということになるので、手厚い看護を期待できる側面があります。
HCU(ハイケアユニット)やICU(インセンティブケアユニット・集中治療室)などの重篤な患者に医療を施す病室を除くと通常の病棟における最高の基準は7対1です。
7対1の場合、「7」が患者の数、「1」は看護職員の数です。
実はこの看護職員の「1」というのは単純に頭数の「1人」ではありません。
入院病棟で働く看護職員というのは比較的、勤務時間の長い常勤職員(正社員)と短時間勤務の職員(パート)が働いています。
常勤職員とパート職員では勤務時間が違うので、どちらも同じように1名と数えられるわけではありません。
そこで、常勤職員も非常勤職員も実際に働いた勤務時間が基準になり計算されます。
(所定労働時間を超える場合は除外されます。)
様式9
看護基準を計算するために”様式9”という様式にそって、計算を行います。
“様式9”は診療報酬の書類で一番重要な書類です。
様式9を作成する上で、主に必要なものは「看護基準(7対1や10対1など)」・「入院患者数」・「看護職員の総勤務時間」となります。
順を追って説明します。
入院患者数
入院患者数とは毎日の24時現在に入院している患者さんの平均人数です。
基本的にその日の退院患者数は含みません。
これを在院数と表現したりもします。
入院患者数を多いほど、必要な人員は増えてきますが、入退院の多い少ないは直接的には関係ありません。
例えば ある1日の病院比較ですが(どちらも看護基準は同じとする)
A病院 患者数10名 入院患者数 40名
B病院 退院患者数2名 入院患者数 40名
となった場合、退院患者が多くいたA病院の方が忙しいですが、入院患者数は同じなので基準上の必要な看護師の勤務時間は同じになります。
看護職員の勤務時間(必要時間数)
前述した看護基準(7対1や10対1など)と入院患者数を元に看護職員の必要勤務時間数が計算されます。
例えば、7対1の病棟 一ヶ月の入院患者数40名の場合で計算してみましょう。月の日数は31日とする。
① 1日あたりの看護師の数を求める
40人(入院患者数)÷7(7対1の看護基準)×3(定数)=17.14(小数点以下切り上げ)
→ 18人
② 1日あたりの勤務時間数
①で求めた18人 × 8(定数) =144時間
③ その月の総勤務時間
②で求めた144時間 × 31日(稼働日数)= 4464時間
という計算で、この病棟で必要な看護師の勤務時間数は4464時間ということになり、この勤務時間数を上回る看護師の勤務があれば基準を満たしているということになります。
これを下回ると、違法状態になるため、診療報酬の返金対象になったり、類下げ(例:7対1→10対1)をしなければなりません。
ちなみに時間帯によって働いている看護師の人数に偏りがあっても問題ありません。(最低人数に決まりはありますが夜勤の人数には最低基準があります。)
ある日の午前中に20名の看護師が働いて、午後には4名でもかまいません。
またある日には30名の看護師が働いて、次の日に10名しか働いていなくても問題ありません。
要は1ヶ月間の看護師の総勤務時間を満たしているかどうかが問われます。
様式9・夜勤72時間ルールを解説|超過するなら、まず設定時間の見直し!
まとめ
少し難しかったかもしれませんが、ここまで読むと多少理解できたのではないでしょうか。
特に病棟で働く看護師さんは、少しは看護基準の計算の仕方を理解しておくと、病院経営が理解できるようになると思います。
実際の様式9の作成にはもっと細かいルールがたくさんありますが、詳細は省きました。
ここで計算した値はあくまでも概算の値になるので、ご注意ください。
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コメント
コメント一覧 (6件)
ててて様
勉強させてもらっています。
唐突ですが、一点質問させてください
①『看護基準(7対1や10対1など)と入院患者数を元に看護職員の必要勤務時間数が計算されます。』この『看護職員』には夜勤専従者は含まれるでしょうか?
②72時間ルールを守るためには夜間専従者が多ければ多いほど守りやすくなると思いますが、様式9はクリアーしやすかどうかは無関係・・と考えていいでしょうか?
コメントありがとうございます。
①についてですが看護師の夜勤専従者の勤務時間も様式9の実績時間として計算します。
②についてですが、ご指摘のとおり、夜勤専従者が多くなると72時間ルールはクリアしやすくなります。また様式9全体としては日勤・夜勤の区別なく総実績時間で計算するので無関係ということになります。
ててて様
ご教授ありがとうございました。
72時間ルールと様式9をごっちゃにして混乱していました。
ててて様
何度も申し訳ございません。訂正させてください。
看護職員の必要勤務時間数 ではなく、
看護職員の実績勤務時間数の間違いでした。
すいませんがご教授のほどお願い申し上げます。
教えて下さい。療養介護病棟でも障がい者病棟看護基準で7対1になってて人手足りなくてもその日が7対Ⅰであればいい。夜勤から30人いればいいところを40人いるから十分足りてると言って看護師をふやしてもえません。育休免除で時短の人准看人も含めてます。深夜深夜遅出っていう過酷な勤務増えてきてて疲れが取れないとか辞めたいって言いだしてます。
3月に8人辞めて補充は新人と育休あけの3人です。
56人中呼吸器は54人。これに検査入院とショートが入ると59人になります。看護職員増やすのは不可能でしょうか。
病院管理者には知られたくないです。
どうか患者と看護師を救ってください。
御教示お願いします。
職場の大変な状況、お察しします。
結論としては実際に作成されている様式9を確認することで交渉ができるかもしれないと考えています。
様式9の考え方を簡単に整理します。
評価されるのは職員の頭数は直接関係ありません。
実際にその病棟で勤務した時間数が評価の対象となります。
なので、常勤職員が多い病棟であれば頭数は少なくなりますが、パート職員や時短職員が多いと頭数は多くなります。
必要な時間数は直近1年間の平均入院患者数から算出されるので、直近の入院患者数とは感覚がずれる場合があります。
またその日ごとに基準時間数を満たす必要はなく、その月全体で基準時間数を満たせばOKということになります。
平日は職員が多く配置されて、休日は職員が少ないということはよくあるケースではないでしょうか。
以下の条件で必要時間数を考えます。
看護基準:7対1
入院患者数:58人
評価する月:10月(31日の月)
この場合は必要時間数は6200時間になります。
これに関連する加算を届け出ているとさらに必要になることがあります。
実際に作成されている様式9をみることができれば配置基準を満たしているかどうかの判断ができます。
もし基準を満たしていないのであれば病院管理者に訴えやすいのかもしれません。
基準を満たしていなかったり、毎月作成されていない病院は稀にあるようです。