適時調査は再開されました。
恐怖の適時調査ですが、厚労省が使う点検マニュアルが公開されているので、マニュアルに適応した対応をすれば返還はありません。
「重点項目」と「重点項目以外」に分かれているので、特に「重点項目」については特に注意して対応してください。
入院基本料に関わるところは最も気をつけて対応しなければなりません。
厚生局が行う適時調査は日本中の病院管理者が恐れるイベントです。
一般職員から見れば管理者たちが右往左往している様子が見え、医事課が書類作成に追われているように見えるのではないでしょうか。
医療機関での管理者経験が長い職員でも適時調査は、かなりのストレスがかかります。
2020年度からは新型コロナウイルス感染症のパンデミックがあり、この2年間は適時調査が実施されませんでした。
その代わりに、自主点検という形で書類提出が求められ、緊張感の乏しい代替調査となっていました。
でも、2022年度からは適時調査が再開します。
かなり気をつけて対応しないと病院経営に大きく響くような返還が求められる恐れがあります。
しっかり、対応しないと大変なことになります。
適時調査は病院が対象です。医療監視との違い。
地方厚生局の職員が数名で病院に直接、乗り込んできて日頃の病院運営を施設基準をもとにチェックするのが適時調査です。
地方厚生局に届け出ている個別項目の施設基準に対してチェックが行われますが、基準から逸脱するようなことがあれば、場合によっては診療報酬の返還が求められる非常に厳しいものです。
数百万円から数千万円の返還が求められるケースもあり、油断はできません。
過去には1億5000万円を超える返還が求められるケースがありました。
病院に乗り込んでくる調査には、保健所が実施する「医療監視」もありますが、これも同様に日頃の病院運営についてチェックされますが、診療報酬の返還を求められない点に大きな違いがあります。
指導・適時調査での返還額
適時調査と同様に診療報酬の返還が求められるのが「指導」です。
下の表は厚生労働省のサイトで、開示されている返還金額です。
指導・適時調査・監査による返還金額は令和元年の実績で59億円もの返還金額が発生しています。
令和2年度と3年度は新型コロナの感染拡大の影響で、前年度よりも減少しています。
ですが、すでに令和4年度は適時調査は再開しているので返還金額は増えてくるかもしれません。

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001039395.pdf
他人事ではなく、自分ごととして捉えて、適時調査に備えることが大切です。
適時調査の経済的措置(一部抜粋)
① 施設基準を満たしていないことが判明し、届出の変更又は辞退を求める場合は、前回の適時調査(特定共同指導、共同指導を含む。)以降分を対象として、施設基準を満たさなくなった日の属する月の翌月から現時点までの返還を求める。
② 返還金関係書類は調査結果の通知後、診療所及び薬局は1か月後、病院は2か月後を期限として提出を求める。
返還を求められた場合は、前回の適時調査までの期間が対象となり、病院は2か月以内に書類を提出しなければいけないので、返還額が大きくなる恐れがあるのと同時に、書類作成にも相当な時間を要することになります。
重点的に調査を行う施設基準
適時調査の個別項目には「重点的に調査を行う施設基準」と「重点的に調査を行う施設基準以外」に分けられています。
当然、警戒すべきは「重点的に調査を行う施設基準 」です。
入院基本料や特定入院料が重点施設基準になっていますが、基本料は収益に占める割合が高いため当然と言えば当然かもしれません。
もう一つの傾向は、比較的新しい個別項目(新設項目)が指定されていることです。
医師の働き方の見直しが話題になる中、「医師事務作業補助者加算」が対象になったり、新型コロナ感染症が拡大すれば「感染対策向上加算」が対象になったりと比較的注目度の高い個別項目は特に注意が必要です。
【初・再診料】
- 情報通信機器を用いた診療に係る基準
【入院基本料】
- 一般病棟入院基本料
- 療養病棟入院基本料
- 結核病棟入院基本料
- 精神病棟入院基本料
- 特定機能病院入院基本料
- 専門病院入院基本料
- 障害者施設等入院基本料
【入院料等加算】
- 急性期充実体制加算
- 超急性期脳卒中加算
- 診療録管理体制加算
- 医師事務作業補助体制加算
- 急性期看護補助体制加算
- 看護職員夜間配置加算
- 看護補助加算
- 療養環境加算
- 重症者等療養環境特別加算
- 療養病棟療養環境加算
- 療養病棟療養環境改善加算
- 放射線治療病室管理加算
- 緩和ケア診療加算
- 精神科身体合併症管理加算
- 精神科リエゾンチーム加算
- 栄養サポートチーム加算
- 医療安全対策加算
- 感染対策向上加算
- 患者サポート体制充実加算
- 重症患者初期支援充実加算
- 報告書管理体制加算
- 褥瘡ハイリスク患者ケア加算
- ハイリスク分娩管理加算
- 呼吸ケアチーム加算
- 術後疼痛管理チーム加算
- 後発医薬品使用体制加算
- 病棟薬剤業務実施加算
- 入退院支援加算
- 認知症ケア加算
- せん妄ハイリスク患者ケア加算
- 精神科急性期医師配置加算
- 排尿自立支援加算
- 地域医療体制支援加算
- 医師の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制(共通)
- 看護職員の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制(共通)
【特定入院料】
- 救命救急入院料
- 特定集中治療室管理料
- ハイケアユニット入院医療管理料
- 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
- 小児特定集中治療室管理料
- 新生児特定集中治療室管理料
- 総合周産期特定集中治療室管理料
- 新生児治療回復室入院医療管理料
- 一類感染症患者入院医療管理料
- 特殊疾患入院医療管理料
- 小児入院医療管理料
- 回復期リハビリテーション病棟入院料
- 地域包括ケア病棟入院料/地域包括ケア入院医療管理料
- 特殊疾患病棟入院料
- 緩和ケア病棟入院料
- 精神科救急急性期医療入院料
- 精神科急性期治療病棟入院料
- 精神科救急・合併症入院料
- 児童・思春期精神科入院医療管理料
- 精神療養病棟入院料
- 認知症治療病棟入院料
- 特定一般病棟入院料
- 地域移行機能強化病棟入院料
- 特定機能病院リハビリテーション病棟入院料
- 短期滞在手術等基本料
【特掲診療料】
- 外来栄養食事指導料
- 遠隔モニタリング加算
- 乳腺炎重症化予防ケア・指導料
- 婦人科特定疾患治療管理料
- 腎代替療法指導管理料
- 一般不妊治療管理料
- 生殖補助医療管理料
- 二次性骨折予防継続管理料
- 下肢創傷処置管理料
- 救急搬送看護体制加算
- 外来腫瘍化学療法診療料
- 外来データ提出加算
- ニコチン依存症管理料
- 療養・就労両立支援指導料
- こころの連携指導料
- 薬剤管理指導料
- 地域連携診療計画加算
- 医療機器安全管理料
- 精神科退院時共同指導料
- 禁煙治療補助システム指導管理加算
- 在宅データ提出加算
- 救急搬送診療料の注 4 に規定する重症患者搬送加算
- 在宅患者訪問看護・指導料の注 15 に規定する訪問看護・指導体制充実加算
- 在宅患者訪問看護・指導料の注 16 に規定する専門管理加算
- 持続血糖測定器加算(間歇注入シリンジポンプと連動しない持続血糖測定器を用いる場合)
- 染色体検査の注2に規定する基準
- BRCA1/2遺伝子検査
- がんゲノムプロファイリング検査
- 角膜ジストロフィー遺伝子検査
- 先天性代謝異常症検査
- 抗アデノ随伴ウイルス9型(AAV9)抗体
- ウイルス・細菌核酸多項目同時検出
- 検体検査管理加算
- 遺伝性腫瘍カウンセリング加算
- 時間内歩行試験及びシャトルウォーキングテスト
- 単線維筋電図
- 終夜睡眠ポリグラフィー(安全精度管理下で行うもの)
- 神経学的検査
- 黄斑局所網膜電図
- 全視野精密網膜電図
- 前立腺針生検法(MRI撮影及び超音波検査融合画像によるもの)
- 経気管支凍結生検法
- 画像診断管理加算
- 血流予備量比コンピューター断層撮影
- 全身MRI撮影加算
- 肝エラストグラフィ加算
- 外来化学療法加算
- 心大血管疾患リハビリテーション料
- リハビリテーションデータ提出加算
- 脳血管疾患等リハビリテーション料
- 運動器リハビリテーション料
- 呼吸器リハビリテーション料
- 障害児(者)リハビリテーション料
- がん患者リハビリテーション料
- リンパ浮腫複合的治療料
- 経頭蓋磁気刺激療法
- 療養生活環境整備指導加算
- 療養生活継続支援加算
- 依存集団療法
- 精神科作業療法
- 精神科ショート・ケア
- 精神科デイ・ケア
- 精神科ナイト・ケア
- 精神科デイ・ナイト・ケア
- 医療保護入院等診療料
- 静脈圧迫処置(慢性静脈不全に対するもの)
- 多血小板血漿処置
- 人工腎臓
- 導入期加算及び腎代替療法実績加算
- 下肢末梢動脈疾患指導管理加算
- 難治性高コレステロール血症に伴う重
- 度尿蛋白を呈する糖尿病性腎症に対するLDLアフェレシス療法
- 移植後抗体関連型拒絶反応治療における血漿交換療法
- 心不全に対する遠赤外線温熱療法
- 周術期栄養管理実施加算
- 輸血管理料
- 輸血適正使用加算
- 貯血式自己血輸血管理体制加算
- 麻酔管理料
- 周術期薬剤管理加算
- ホウ素中性子捕捉療法
- ホウ素中性子捕捉療法適応判定加算
- ホウ素中性子捕捉療法医学管理加算
- 病理診断管理加算
どこの病院でも、何らかの施設基準が重点施設基準に該当するのではないでしょうか。
様式9が最重点様式です!
特に重要な書類が「様式9」です。
この書類は病棟の看護職員配置、入院患者数、平均在院日数などを確認するための書類ですが、算出の考え方が独特なので、それぞれの値を理解しながら作成しないと非常に危険です。
病院によっては看護部長が中心になり、作成している病院もあるようですが、ここは必ず担当事務や医事課が一緒になって確認しておくことが良いでしょう。
しっかり日頃から確認しておかないと巨額の返還請求を求められる恐れがあります。
逆に言えば様式9が しっかり作成・管理されている病院は巨額の返還請求を求められるケースはほとんどないと言えます。
様式9【看護基準の計算方法】|7対1や地域包括ケア病棟でも同じ計算方法
様式9・夜勤72時間ルールを解説|超過するなら、まず設定時間の見直し!
新型コロナの感染拡大を受けて、適時調査が「簡素化」されるケースがあります。
その場合でも、様式9は必ず細かく点検されます。
様式9は事前提出書類にもなっているので、適時調査当日以前に点検されているので、当日に不備が指摘されることはよくあることです。
簡素化された場合、各種加算は調査から外れる可能性はありますが、入院基本料は必ず点検されます。
看護必要度、平均在院日数、1日平均入院患者数、在宅等復帰率は、根拠となる資料も含めて提示を求められるので適時調査当日までに用意しておくことを強くおすすめします。
調査書(調査マニュアル)・適時調査はマニュアル通り
厚生局の調査員が、どこの病院に行っても同じ内容の調査が進められるように厚労省は調査書(調査マニュアル)を作成しています。
適時調査は、この調査書(調査マニュアル)に従って進められます。
2016年頃までは、この調査書が開示されていませんでしたが、2018年あたりから厚生省のサイトで開示されるようになりました。
適時調査の通知を受け取った病院は、必ずチェックしておきましょう。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shidou_kansa_jissi.html


上の図のように調査項目ごとに「適・否」が評価されることになります。
ここでチェック項目が要件を満たしていれば、適時調査は恐れるに足りません。
適時調査の参考書
先程、書いたように適時調査は調査書に従って進められますが、それ以外のところも確認されます。
特に「指導担当」の職員が適時調査の応援に入ることがある場合は大変です。
指導担当の職員は、通常、違法性の高い医療機関への調査を担当していることがあり、追及が厳しくなります。
指導担当が調査に当たった際には警戒しましょう。
私自身は適時調査で毎回、冷や汗をかいてきました。
痛くない腹でも指摘されれば、ヒヤヒヤしてしまいます。
もし適時調査を経験しているスタッフが少ない病院で、対応する場合は事前に学習しておくことが良いと思います。
私の病院ではこのDVDを購入し、看護部長などや他の管理者、医事課スタッフにも見てもらいました。
私の拙い言葉では伝えきれない部分を解説してくれるので、多少なりとも緊張感が伝わるのではないでしょうか。
この本は私が医事課長として経験が浅いときに購入しました。
どこに気をつけて提出書類を作成するのか、施設基準の理解の甘さを補ってくれる良書だと感じています。
だた、少し高価なので、病院負担で買ってもらわないと自分ではとても買えない代物です。
発売してから時間が経過してますが、今のところ これが最新版です。
基本的なところは抑えているので、1冊は手元においておきたい本です。
こちらのシリーズは最新の改定に対応しているので、今ならこちらのほうがおすすめです。
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)
コロナ禍の適時調査における最も重要な通達が厚生労働省保健局医療課から出されている
「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)」です。
適時調査の通知が送られてきた医療機関の方は。まずはこの通知を読んでもらいたいです。
この通知の内容を抜粋すると
① 定数超過入院について、「厚生労働大臣の定める入院患者数の基準及び医師等の員数の基準並びに入院基本料の算定方法について」(平成 18 年3月 23 日保医発0323003 号)の第1の2の減額措置は適用しないこと。(2月 14 日事務連絡1(1))
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)
② 月平均夜勤時間数について、1割以上の一時的な変動があった場合においても、当分の間、「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和2年3月5日保医発 0305 第2号。以下「基本診療料の施設基準等通知」
という。)の第3の1(1)の規定にかかわらず、変更の届出を行わなくてもよいものとすること。(2月 14 日事務連絡2(1))
③ 1日当たり勤務する看護師及び准看護師又は看護補助者(以下「看護要員」という。)の数、看護要員の数と入院患者の比率並びに看護師及び准看護師の数に対する看護師の比率について、1割以上の一時的な変動があった場合においても、基本診療料の施設基準等通知の第3の1(3)及び(4)の規定にかかわらず、変更の届出を行わなくてもよいものとすること。(2月 14 日事務連絡2(2))
④ DPC対象病院について、「DPC制度への参加等の手続きについて」(令和2年3月 27 日保医発 0327 第6号)の第1の4(2)②に規定する「DPC対象病院への参加基準を満たさなくなった場合」としての届出を行わなくてもよい。(2月14 日事務連絡2(3))
⑤ 平均在院日数、重症度、医療・看護必要度、在宅復帰率及び医療区分2又は3の患者割合等の要件について、基本診療料の施設基準等通知における当該要件を満たさなくなった場合においても、直ちに施設基準の変更の届出を行わなくてもよい。
新型コロナウイルスの感染拡大を憂慮して、通常よりもかなり基準を緩めてくれています。
施設基準の厳守よりも新型コロナウイルスにしっかり対応するよう厚労省から出されたメッセージです。
極端に言えば、この通知がいきている間は、様式9における病棟の看護配置や看護必要度は満たさなくても問題視されないということです。
前代未聞の通知であることは間違いありません。
ただし、この通知の適用を受ける病院は限られています。
ア 新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた保険医療機関等
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)
イ アに該当する医療機関等に職員を派遣した保険医療機関等
ウ 学校等の臨時休業に伴い、職員の勤務が困難となった保険医療機関等
エ 新型コロナウイルス感染症に感染し又は濃厚接触者となり出勤ができない職員が在籍する保険医療機関等
簡単言うと「新型コロナウイルスの患者を受け入れている医療機関」と「新型コロナウイルスにより運営が困難な医療機関」に限られます。
影響の受けていない医療機関に対しては基準を緩めてはくれませんので、十分注意してください。
詳細については以下を参照ください。
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その26)
まとめ
新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で、過去2年間は適時調査がほとんど実施されませんでした。
2022年度は再開です。すでに始まっています。
病院経営にとって最も重要な調査である適時調査は、重点項目が決められています。
特に「様式9」はもっとも重要な点検項目であり、慎重に正確に作成しないといけません。
厚生局に届け出た項目は日常的にしっかり点検しながら運用しないといけませんが、完璧に点検・運用できている医療機関は、ほとんどないでしょう。
医事課だけでなく、病院の総力をかけて適時調査を迎えましょう。

コメント
コメント一覧 (2件)
拝読させていただいております。
9号様式上でのご質問ですが夜勤時間帯の変更で平均時間数が減ると解釈させていただき実際に17:30から09:30に変更し計算したところ、当院では0,7時間ほどの時間削減にしかなりませんでした。
詳細をご教授いただけると幸いです。
コメントありがとうございます。
こちらのページもごらんになられたでしょうか。
(https://tetetenohanasi.com/yakin-72jikan/)
推測ですが、「夜勤従事者」の頭数が少ないのかもしれません。
例えば
急性期一般の場合、当該月の夜勤時間が16時間以上のスタッフを「夜勤従事者」とみなします。
夕方から翌朝まで勤務する必要はありません。いわゆる当直者だけが夜勤従事者ではありません。
1.勤務時間が9:30~17:30の場合の夜勤時間は0時間となります。
2.勤務時間が8:30~16:30の場合の夜勤時間は1時間(8:30~9:30)となります。
「2」のパターンでも、その月に16日間勤務すれば夜勤従事者となります。
原因として考えられるのは
・夜勤従事者とみなせるスタッフが少ないこと
・いわゆる日勤者の勤務時間に夜勤時間が少ないこと
などが考えられるでしょうか
ご質問の答えになっているかどうかわかりませんが
参考になれば幸いです。